映画・ドラマで描かれる「男らしい」ナイスガイの問題(BBC記事)

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BBCで、これまで映画・ドラマで「男らしさ」を提示してきた弊害について面白い記事があった。

Netflix's You and how 'nice guys' became the real villains
Now returning for a third series, the hit show is part of a wave of film and TV subverting preconceptions about the men who commit violence, writes Sophie Monks...

映画やテレビにおいて、悪役描写でありふれているのは、一目見て脅威だとわかる存在。『エルム街の悪魔』のフレディ、007の最新作『No Time To Die』のラミ・マレック演じるサフィンとか。顔の傷を偏見めいて使用していることが多い。でも、現実の世界では、普通そうな、所帯持ちの男が極悪人であることがよくある。近所の人へのインタビューでは「まさか大人しそうなあの人が」となる。

そういえば『スペクター』のヴァルツも。『ダークナイト』『スターウォーズ』も。画面映えのためもあって、あきらかに悪役とわかるルックスが多い。

最近の映画ドラマのストーリーでは、そうした事実を反映している作品が増えている。しかも尊敬できてナイスガイなことも。

Netflixの『You』では、ハンサムで魅力的な男ジョー(ペン・バッジリー)が実はサイコなストーカーだったという話。ジョーは、妄想的な物質主義者で、常に行動を正当化する本人のナレーションが入るのもこのドラマの面白さである。また、今年上映されてアカデミー賞をいくつも獲得した『プロミシング・ヤング・ウーマン』でも、デートレイピストたちは「でも僕はナイスガイだから」と自分を守ろうとする。

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記事の中に、私はこれまで気づかなかったけど「へぇー」と思った見解を見つけた。日本でも人気だった『アバウト・タイム』について。ドーナル・グリーソン演じる主人公が、何度も過去に戻って、彼女(レイチェル・マクアダムス)と寝るのを再現するシーンを、ある批評家が「デートレイプのためにタイムトラベルをロヒプノール(睡眠薬)代わりに利用している」と批判したそうで。

※そのシーンは覚えているけど、そんな考えに思い至らなかった。主人公の男性が、彼女と寝れた嬉しさあまりの行動を面白おかしく描いている、と受け取ったが、そのあたりの表現が難しい時代だと感じる。

上の記事の記者は、テレビや映画では、魅力的な女性を手に入れるために犯罪ギリギリを攻めることが、好ましい男らしさの模範だとされてきた、と述べている。

確かにタフで積極的な男性をロマンチックに描いてきたけど……
映画の影響、というよりかは昔から積極的な行動が求められていた。ただ今は人権や法律に、法を犯さずジェントルにアプローチする必要がある。

あと『ラブ・アクチュアリー』で、突然キーラ・ナイトレイが、家に訪問してきた夫の友人の男に告白される場面も指摘している。ロマンチックな演出だったけど、それ問題だよねと。実際に、奥さんのお宅訪問して告白したらヤバイのである。

(記者の方は、リチャード・カーティス監督がお嫌い?)

とは言っても、私もうっすら『アバウトタイム』や『ラブ・アクチュアリー』への違和感は感じていて、当時もあんまり好きではなかった。一方的な恋が展開されていて、そんなにハマらなかった記憶がある。普通に楽しんで鑑賞したものの。

『You』ではカッコいい常識のありそうな男が実はサイコパスだったことを描いているが、視聴者のファンは結局、「私もジョーに殺されたい!」と感想を持つに留まっている。また、最近のシリーズでは、ジョーの中の「善」に焦点を当てたり、サイコパス妻との攻防を描いたりで、すぐにジョーが断罪されるというよりは、ドラマ的展開が重視されてしまったようである。これまでのナイスガイに許されてきた、求められてきた行いの刷り込みをひっくり返すような作りにはなっていない。

……そういえばアマプラの『BOYZ』でも極悪ヒーローたちの内面を、単なる「悪」ではなく情状酌量の余地があるように描いてたなあ。

ナイスガイでステータスもあると、犯罪も許されると信じ込みすぎたのが、2016年の東大生によるレイプ事件などか。自分はステータスがあるから、カッコいいから、バカそうで派手な女への暴力は許されるという思い込み。力のない女性は訴えることも難しいけど、最近はそういった無自覚な暴力が明るみに出てきて裁かれるようになった。一部の女性はそうした暴力を受け入れているかもしれないけど、若い頃に許しているときっと後で後悔することになるだろう。

『You』に対して『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、社会的ステータスがある男が尊敬されているがゆえに罪を見逃せられている点を明確に描いていたので、評価されている。

ドラマも現実も、物語を動かす必要があって、より面白くを追求しようとすると、何らかの社会的示唆は薄れてゆく。海外ドラマの場合は、とにかく話が長いし、シリーズを伸ばすために色々展開作る必要があるし難しい……。その点、映画はテーマ性を持って2時間くらいの尺で制作するから、一貫したメッセージが伝わりやすい。

日本での流行りの壁ドンとかも、物語をより面白く刺激的にするための演出。

映画・ドラマの話に戻ると、どんな作品があってもよいと思うけれど、昨今は製作者側が男らしい暴力を「無自覚に」「魅力的に」描くのはまずいのかもしれない。メジャー作品であればあるほど価値観アップデートが求められているようだ。

ところで、日本の映画ドラマってどうだろう? 普通っぽい隣人が、実はやばい殺人鬼でした!という展開は日本のドラマでけっこう見る。もちろん『プロミシング……』のように、そこに男性・女性が内在化しているテンプレ問題を描いたり、高度な社会的メッセージはないけれど。今後作品を見るときは悪役の描き方にも注目してみよう。

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